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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット3:家具・インテリア用品、住宅設備
川上 元美 デザイナー

ユニット3は、家具、インテリア、住宅設備機器や部材など生活周辺のあらゆる商品が対象となっている。そのため、この多様な商品群の評価軸が定まりにくく、論議を尽くして、的確に評価することが求められる。
一方では、機能部分が日々進化を遂げる中、ますますメカや外装といったハードが不可視化されていく設備や機器。そしてもう一方では人々の生活のぬくもりや豊かさ、自然との共生を求める眼差しのもと、感性や手技と道具との関係性がより顕在化していく生活道具。その2つに大別される状況はこのユニットでも顕著である。
前者に該当する商品の中で、インターフェースそのものが今だに未熟であることが目につく。高齢化社会を意識して文字やボタンが大きいだけで、フォントや色彩計画、レイアウト、あるいはシステムそのものに気遣いがあるものは少ない。いろいろな試みや挑戦はあるが、目的とする機能を取り込んだうえに、より解りやすく品位あるものがほしい。
また、このカテゴリーの中でも「エコ」を標榜するものは多いが、今や当然のテーマである。近年LED光源が増え、既存のソケットを使用するランプ型とLEDの新しい可能性を追求するタイプなどが挙げられる。こぞって中小企業や海外企業も参入しており、進化の渦中で、デザインの新たな可能性を期待するところから、現時点で評価が難しい部分もあった。
家具インテリア用品、とくに家具に関しては、林業—製材業—家具産業と一元的な業界が多い故か、広がりに乏しい。異業種のハード、ソフトを取り込むことで、企画力、技術力が伴った「次世代の暮らしや社会に繋がるものづくり」を創造していかないと、今や横並びのアジア諸国に席巻されてしまう危惧感を覚える。
突出したものが見当たらないとはいえ、周到に計画された素材の生産から加工、販売まで一環的にシステム化された「ケナボード」、「日南地方から発信する飫肥杉プロジェクト」、そしてワークショップ方式で、良質な木製家具を毎年応募してきた「宮崎椅子製作所とデザイナー」の成果が特別賞に推挙されたことは喜ばしい。