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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット13:家庭用通信機器、家庭用A&V機器、業務用・公共用通信機器、業務用・公共用A&V機器
朝倉 重徳 インダストリアルデザイナー

ユニット13が対象としている情報機器類の技術開発は衰えを知らず、ハード面の小型化、薄型化の流れはサイズやプロポーションという製品の根本的なところを変えていく。さらにユーザーの習熟度の向上に伴って画面の直接操作への移行も進み、ハード面でのインターフェースの簡素化が顕著に見られた。
テレビは、こうした技術開発の進展を背景にして、今年も薄型化を強調するシンプルなデザインが主流であった。造形要素が減れば、それだけ質感やディテールが優劣を決める。サムスンの製品は、素材の特性を活かしたクオリティーの高い仕上げが印象的であった。また、ソニーのブラビアは、モノリシックデザイン(一枚岩)というコンセプトの下、板をブロックに突き刺した造形を提案してきた。その発想は他とは明らかに違ってイノベーティブであり、ベスト15に値するものであった。それは、物理的な存在が薄れていくテレビデザインの中にあって、まだまだ彫刻的インパクトを醸し出すことができることを教えてくれる。 カーナビゲーションは、筐体のほとんどがダッシュボードに埋め込まれて存在感を失いつつある製品である。そのため、画面の存在感の比重が増す中で筐体部分をおろそかにせず、画面と筐体を整合させた製品が高い評価を得た。
一方で、光学機器を含むプロジェクターは、テレビやカーナビとは違い、機構設計の自由度が少なく、小型化など思い通りのレイアウトが難しい製品である。できるだけ存在感を抑え、設置空間に溶け込ませたいという開発者の意図は容易に想像できたが、そうした中でも機構と造形コンセプトが破綻なく融合している製品が高い評価を得た。
ユニット13は、家庭用・業務用・公共用のオーディオ・ビジュアル機器/通信機器といった幅広いアイテムを対象としているため、デザイン上の特徴を一括りに捉えることは難しいが、全体の傾向としては幾何的で造形要素を絞り込んだ普遍的なかたちが多く見られた。その要因として、小型化薄型化と画面操作へのシフトによる造形要素の減少という技術的背景も理解できるが、一方で単なる新規性や差別化だけに価値を求めるのではなく、長く使うことを意識すればこその普遍性の表現が求められたとも考えられる。しばらくこの傾向は続くと思われるが、シンプルな造形であるだけに、細部へのこだわりと、それを実現する生産技術の裏づけが製品の出来映えを左右することになるだろう。