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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット12:個人向けパソコン、および周辺機器、家庭向けパソコン、および周辺機器、業務用・公共用コンピュータ、および周辺機器
渡辺 弘明 インダストリアルデザイナー

ユニット12ではパソコン及び周辺機器を審査対象としているが、例年エントリーの大半を占めるノートパソコンの評価の視点を決めるのにかなりの時間を要していた。とりわけ、ネットブックと呼ばれる小型のモバイルパソコンは、各社横並び気味で、異なるメーカーでありながらどこが違うのか?から審査がスタートすることが多かった。その反省もふまえ、2010年は審査を始める前にノートパソコンの評価基準を如何に定めるか議論したのであるが、蓋を開けてみると各社コンセプトが明確でレベルアップしたものが多く、審査委員一同ほっとした。 その小型のモバイルパソコンをベースに新たな提案が見られた。教育用ノートパソコンとそれらをストレージするカートを含めたDELL Education Notebook PC Latitude 2100である。さしずめPC版移動図書館といったもので、ストレージされた状態でノートパソコンの充電やアップデートがおこなえ、アクセシビリティにも優れる。ハードウェアが個人に従属しないところはパーソナルコンピューティングならぬパブリックコンピューティングと呼べ、パソコンのあり方について方向性を示している。このようなコンセプトを製品化したメーカーの姿勢に敬意を表したい。 周辺機器ではデジタル複合機に注目した。アナログ複写機からデジタル化により、パソコンの入出力機器へと進化したことで、多機能化が進み、それらを如何に分かりやすく効率的に伝えるかが重要なポイントとなる。そのユーザーインターフェースに関して、対象メーカー6社17件に対しヒアリングをおこなった。各社の考え方の違いがハード以上に鮮明で、熟慮されていることが理解できたが、中でもコニカミノルタの機器はここ数年飛躍的な進歩を遂げている。見やすく完成度の高いGUI、ユーザーのスキルや好みに応じた操作を可能にするなど、ストレスのない操作を実現し、審査委員から高い評価を得た。 近年、機器のデジタル化はメディアを介することなく録再生できるオーディオ・ビジュアル機器等に代表されるメカレス、低価格化の流れが顕著で、日本から流出しつつある産業すら見受けられる。しかし複合機に代表されるコンピュータ周辺機器は、スキャン、プリント、紙の搬送等技術的難易度の高いメカの集合体で、併せてきめ細やかなUIもまた日本製品ならではと言える。日本が培ったこの産業を絶やすことなきよう、エンジニアリングとともにデザインは大きな役割を担っている。