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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット11:携帯電話・モバイル通信端末、個人向けA&V機器
柴田 文江 インダストリアルデザイナー

ユニット11は、携帯電話、モバイル通信端末、個人向けオーディオ・ビジュアル機器を対象としており、工業製品としては比較的速い速度で進化してきたモノのカテゴリーである。近年それぞれの製品特性は、高機能化したことで商品カテゴリーの壁を越えて重なりあり、似通ってきている。デジカメとビデオカメラでは動画と静止画のクオリティーの差が縮まり、ビデオカメラでも美しい静止画が撮影でき、デジタルカメラで本格的に動画を楽しむようにも考えられてきている。ビデオカメラをメーカー横並びに見てみても、使い勝手や使用ポジションを追求した結果、ある一つのスタイルに収束する傾向が見受けられた。それは、デザインに限らず万物の進化の先にある「淘汰」の兆しのようであり、ある種の危機感を感じずにはいられなかったが、そんな中でもいくつかのユニークなモノづくり思想のプロダクトに出会えたことが、デザインに希望を与えてくれた2010年だった。
中でも、ベスト15に輝いたSONYの "NEX-5 / NEX-3" は、 モノが持つ強い魅力を久しぶりに感じさせてくれたプロダクトで、審査委員一同が歓声を上げながら審査をおこなった。ソニーらしさを存分に発揮した道具らしい筐体デザインはもちろん、イメージ通りの写真を簡単に撮りたい「ハイアマチュア」というわがままで新しいニーズに合致させるため、フレンドリーな操作性を実現したUIも秀逸で、デジタルならではの新しいカメラスタイルを提示してくれた。他にもソーラパネルを採用しながら日常使いにも馴染むソーラーフォン SHARP au SH007、フルキーの究極のタフネスケータイ CASIO G'zOne BRIGADE、従来のビデオカメラに装着して3D撮影ができるコンバージョンレンズ Panasonic VW-CLT1など、各社のお家芸を発揮しながら新しい視点を加えたチャレンジには、デジタル機器の展開にもまだまだ余地が残されていると感じることができた。モノづくりにとって厳しい時代の中にあっても、日本のインダストリアルデザインに逞しさと頼もしさを感じることができた。