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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット10:個人向けのサービスシステム、家庭向けのサービスシステム、産業・企業向けサービスシステム、公共サービスシステム
紺野 登 デザインマネジメント

これまでグッドデザイン賞はおもに「モノ」を対象としてきた。ところが日本経済(GDP)の4分の3は非製造業が占め、製造業も含めサービス経済に移行している。今後サービスのデザインが重要になることは言うまでもない。
ユニット10はサービス・ビジネスを主対象にしている(個々のソフトウェアやシステム製品ではない)。本年度の審査を振り返ると、(1)ユーザーに供されるサービス経験の質、(2)ビジネスモデル(サービス・プラットフォーム)のデザインの巧みさ、(3)背後の知識やノウハウ、社会的関係性などの無形資産の活用、(4)ユーザーが価値を感じる「場」のデザイン、(5)総じていかに人間的・社会的な価値を追求しているか、などの点が評価されたといえる。
つまり、典型的には人間的・社会的な問題を解決し、便益や価値を提供する仕組みを構築し、ユーザーが価値を享受しやすい場やインターフェースを提供している事業が挙げられる。なかでも少子化問題に関わる乳幼児周辺のサービス(赤ちゃんの駅、口腔発育)、教育や学習(英語教育、カタリ場)などの営利・非営利サービスが目立った。また、地域共同体をベースにしたビジネス(コミュニティ・バス、レンタサイクル、マンション向けリサイクルビジネス、工務店ネットワーク)、健康やセキュリティ(橋梁点検支援システム)、モビリティ(えきペディア)などのサービスが挙げられた。クラウド・コンピューティングや電子出版(i文庫HD)など最近のITの潮流を反映した受賞も見られた。独自技術を用いたユニークなビジネスモデル(パノラマ画像ライブビュー)もあった。
さらに、以上のような経験自体をデザインする方法論(エクスペリエンス指向アプローチ)など、新たなデザインのあり方についても兆しが見られた。本ユニットはサービス業にとどまらず、サービス経済化の中で変革を迫られている製造業にとっても多くの可能性を有しており、今後の発展が期待される。