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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット1:身の回り品、健康・ケア・介護用品、スポーツ用品、趣味・ホビー用品
左合 ひとみ グラフィックデザイナー

今年は例年以上に、すぐれた機能だけでなく、視覚的な要素が人の心理面に働きかけるデザインに秀作が多いという印象を受けた。ビジュアルコミュニケーション力が機能の一部になっているもの、と言ってもよい。例えば、やわらかな形状が安心感をもたらすヘルスケア用品、身体能力をより発揮できそうなスポーツギア。高齢者がユーザーである製品には、人の尊厳を守る姿をしたものも見られた。その一方で、視覚的にもこまやかな配慮が切実に必要な介護用品においては、今年は的確なものが少なかった。高齢化社会において重要性を増す分野であるだけに、視覚と心理という角度からの取り組みを期待したい。
毎年高く評価されるものには、相反する資質を両立させるための技術革新によって問題解決に成功したものが挙げられるが、今年はベスト15に選出された「電子ドラムDTX950K」に代表されている。アコースティックドラムと電子ドラムの価値を共存させながら、問題点を高次元で解決した新世代の電子ドラムであり、音楽文化の発展に大きく貢献する可能性が感じられた。また「ゴム張り作業用手袋 エアテクターエックス」は、ゴムシートの発泡加工により様々な性能を飛躍的に向上させ、安全性と作業性の両立を実現している。
子ども用の玩具では、バッテリーもペダルもない独自の原理で動く、エコロジカルな「プラズマカー」が出色であった。親子で二人乗りもでき、コミュニケーションツールとしても活用できる。また、大歓声の中で響き渡るキレの良い音と、機動性を高めるフリップグリップを実現した「ホイッスル バルキーン」も、レフリーの意思を明解に伝えるコミュニケーションツールとして秀逸だ。手のひらに収まる小さな道具ながら、スポーツ文化における大きな役割を担うことだろう。これらのすぐれたデザインに共通して言えること、それは、ソリューションの先に、文化に寄与するような価値の創出があるということである。