2009年度受賞結果の概要

2009年度審査総評/審査講評

2009年度審査講評

審査委員イメージ

ユニット8:戸建住宅・集合住宅

難波 和彦

建築家


2009年グッドデザイン賞の住宅部門への応募作品数は、昨年に勃発した金融危機に端を発する景気後退にも関わらず、昨年とほぼ同数でした。建設業界への景気の影響には時間的なズレがあるため、直接的な影響が出てくるのはこれからかもしれません。とはいえ、金融危機は短期投資を主とする賃貸マンション業界を直撃したため、このジャンルの応募数が激減しました。同時に住宅産業からの応募数も減少しました。逆に増加したのはアトリエ系設計事務所による戸建の注文住宅でした。 グッドデザイン賞の目的は、作品の完成度だけではなく、デザインの社会的な意義を評価する点にあります。その視点から、個人のクライアントを対象とする戸建住宅に対しては、かなり厳しい評価基準を当てはめることになります。つまり集合住宅、賃貸住宅、商品化住宅に比べると、戸建住宅のハードルはかなり高くなるのです。このため戸建住宅の当選通過率はかなり低くなりました。さらに集合住宅については、住戸の個別的な提案だけでなく、集まって住むことの可能性を追求した作品がほとんど見られなかったため、当選通過率はさらに低くなりました。この結果、当選通過率はこれまでで最低の値になりました。不景気は総じて応募者の社会意識に影響したような気がします。来年は応募数が減るかもしれませんが、そういう時期にこそ、意欲的でチャレンジングな提案を期待したいと思います。

グッドデザイン賞にご応募いただくディベロッパー各位へのメッセージ

ここ数年、集合住宅再開発の規模は巨大化し、タワーマンションを初めとする巨大集合住宅の建設数も増加してきました。これにともなってグッドデザイン賞への応募数も増加しています。多数の住戸を供給するディベロッパーには、近未来の居住形式を提案する社会的責任があります。それはかつての住宅公団が果たした役割にも似た社会的責任ではないかと思います。しかしながら、総評にも書きましたが、応募作品にはそのような提案はほとんど見られません。ディベロッパーにとって集合住宅は商品であり、経済原理が最大の条件であることは確かです。そのような厳しい条件の元で、何らかの提案を試みることが、グッドデザイン賞応募の最低条件だと考えます。今後の奮起を期待します。