2008年度受賞結果の概要

2008年度審査委員長総評/審査講評

2008年度審査講評

新領域
ユニットD18:新領域

内藤 廣

建築家


 グッドデザイン賞にとって、「新領域」はフロンティアです。商品として市場の洗礼を受けていないもの、商品化する一歩手前の研究段階にあるもの、どのカテゴリーにも属さないまったく新しい商品やビジネスなどが中心です。

 したがって、この領域ではとりわけ先進性が問われます。審査理念の中でも特に「創造 (INNOVATION)」に重きが置かれているのです。しかし、それだけでは受賞に至りません。やはり基本は「グッドデザイン」です。これらの兼ね合いが審査上の判断ということになります。

 審査に当たって以下のガイドラインを示しました。

◎ すでに商品化されているものは、現在の社会的な価値のなかで位置付けられているのだから、よほど新しさがなければ評価しない。

◎ただし、質的内容の高いものは他の領域へコンバートする。

◎ 研究途上にあるもの、商品化されていないものでも、近未来からのメッセージ性を強く感じさせるものは積極的に評価する。

◎システムの革新性が形となって現れているものを評価する。

◎美しくないものは評価しない。

 さまざまな種類のものが応募される領域ですから、一律に評価基準は設けられません。上記の項目を審査委員の合意として応募作を見ていきました。

 

 今年度の応募作の大きな傾向をいくつか挙げるとすると、学際的なものの増加、エコロジーの庶民化、仕組みから仕掛けへ、といった印象があります。新技術のデザインは、今年に限ってはあまり目立ったものがありませんでした。確かに技術は先に行こうとしているのだけれど、それを製品という具体的な価値に結びつける所まで想像力が至っていないのです。イメージが技術に追いついていない。本来は逆であるべきです。未来の生活へのイメージがあり、それに至る手段として技術があるべきでしょう。その意味でロボットに期待したのですが、いまひとつ物足りない印象がありました。

 新技術のデザインは、今はその出口を探している段階、といったところなのかもしれません。来年には、「これぞ新領域」、と我々をうならせるものが応募されてくることを期待します。