2008年度受賞結果の概要

2008年度審査委員長総評/審査講評

2008年度審査講評

身体・生活領域
ユニットA03:家事、調理のための道具・機器など

柴田 文江

インダストリアルデザイナー


本ユニットの対象は「家事や調理のための道具、機器」であり、すべてが毎日の生活の中で使われる道具であることから、ユーザーの暮らし方に照らし合わせて審査を行いました。例を挙げると、リビングから常に見られる存在である冷蔵庫は、家電としての機能をデザイン的に表現するというより家具やインテリアと共存できるか否かなどが審査の軸となります。同じ大型家電でも、洗濯機のように使用場所が限定されている機器類は、その作業をより効率よく手助けするため、デザインがすべき役割を果たしているかが重要なポイントだと考えました。このように、アイテムごとに使われるシーンからデザインの軸はどこにあるべきかを議論し、それぞれに審査の視点を定めることで、適切な結果を得られるものと考えました。

また、本年は調理器具にいくつかデザイナーの創意工夫を凝らした美しいもの をみることができました。株式会社マーナのフライ返し「サークルターナー」は、プラスチックの弾性を生かし、その機能性が生み出した造形の魅力を商品性に昇華させています。株式会社岩城ハウスウエアの「調味料入れ」は、密閉性をあげる工夫が意匠のポイントとして表現されており使いやすく新鮮な印象を受けました。それ以外にも、川嶋工業株式会社の調理用包丁「MOKAシリーズ」、株式会社良品計画の「常滑焼きの茶器」など成熟した商品であっても、純粋にデザインの力によって新しい価値を創出した例を見ることができ、とても前向きな気持ちになりました。

最後に本年特に気になった点として、商品ロゴの扱いについて触れておきたい とおもいます。今年は商品本体に施されたロゴや表示グラフィックの表現にデザイナーのこだわりを感じられないモノが多くみられました。マーケットでのコミュニケーションを目的としたロゴが、そのまま本体に大きく印刷されているモノや、無神経に丸文字を羅列した機能表示などは、それ自体をデザインの対象として根本から見直す必要性を感じました。モノとしてはシンプルになる傾向にあり、デザインの質が高まってきた今だからこそ、改めて本体グラフィックにもデザイナーの思慮とこだわりを発揮しなくてはならないことを、ものづくりに携わる一人のデザイナーとして申し上げたいとおもいます。