2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

 
喜多 俊之
グッドデザイン賞審査委員長
 
喜多俊之

 2005年度グッドデザイン賞は、応募数が3,000点を超えて、前年度をさらに上回りました。企業にとってデザインがいっそう重要になっていることが伺えます。世界の国々の多くが、デザインを国家プロジェクトとして位置づけ、大変重要なキーワードとして位置づけられていることも反映され、海外の国々からの応募が多いことも今年度の特徴の一つにあげることができます。

 このように、グローバリズムが進む中で、「少し未来の暮らし」への糧となるものづくりが、さらに世界中で大きく脚光を浴びるようになっています。もはやデザインとは、暮らし、産業、経済の中核にある言葉として、その内容自体も広がりつつあることを、今年度のグッドデザイン賞でも顕著に示されています。世界のどこかにあったものではなく、今、オリジナル性の高いものを生み出すことが、ますます期待されています。「ハイセンス」&「ハイテクノロジー」がこれからの日本だけではなく世界のものづくりにおけるキーワードのひとつとなるでしょう。

 60億人以上の人々が生活する地球上において、その自然とのバランスを考えると、創造力がより大切になります。常に自然とのバランスを取りながら前進することは、今の私達が置かれた宿命ともいえます。いつも私たちにはより良い「知恵」が求められています。その中でデザインというのは、バランスのとれた「知恵」として役に立とうとしているからこそ、脚光を浴び始めているのではないでしょうか。デザインという言葉は、テクノロジー、センス、マーケティング、エコロジーその他、いろいろな要素が重なって、その交差点に位置しています。

 今年のグッドデザイン賞ベスト15に選ばれたのは、今迄に見られなかったオリジナル製品ばかりでした。その中から今年度のグッドデザイン大賞に、世界一細いインシュリン用の「注射針」が選ばれました。これは日本のものづくりと、ハイテクノロジーによる注射針の新しい構造設計が、「デザイン」という交差点で出会い結実したものと言えるでしょう。この審査に当たっては、表彰式会場で、ベスト15の製品それぞれのプレゼンテーションの後、会場のゲストとGマーク審査委員によって投票され、選出されたものです。病気で悩む多くの人々に痛くない注射針を提供する、というコンセプトのプレゼンテーションが多くの審査票を集め、今年の大賞に選出されました。

 グッドデザイン賞は来年で50周年を迎えます。さらに優れたものを日本から発信し、それを受け取った世界の人々が心豊かになれるということがとても大切です。その意味でも50年におよぶグッドデザイン賞の歴史が持つ意味はとても大きいのです。さらにデザインの次のジェネレーション、次のデザインの意義に向けて、新しい時代が始まろうとしています。

 今年度、初めて金賞審査会・ベスト15の選定に海外のデザイナー、キュレーターに特別審査委員として参加していただきましたが、その意義はとても大きいと思います。世界の人々に素敵なメッセージを、企業もデザイナーも含めて、皆で発信していくことになりました。これからも世界中の人々の心豊かな暮らしのためのものとして、全体にレベルの高さが目立った今年のグッドデザイン賞は、次なる新しい潮流として捉えることができます。

 
 
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