2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

コミュニケーションデザイン部門

永井 一史
 
審査ユニット長 永井一史

 昨年、このカテゴリーにエントリーされたTV番組である「ドレミノテレビ」と「にほんごであそぼ」が、グランプリを受賞した。社会の広範な領域でデザインというものが強く求められている今、審査に携わった多くの人たちの中でも、グッドデザインの定義を広く捉えていこうという、強い意欲を感じた。その流れからもこの部門の重要性はますます高まっている。

 2005年度のエントリーもWEB、パッケージデザイン、VI、ブランディング、空間、番組コンテンツ、ゲームソフト、タイポグラフィーなど、きわめて多岐に渡った。そしてその中で、2点が金賞を受賞した。ひとつめは「触れる地球」だ。
これは、自分と地球とがコミュニケートする装置として生まれたものである。スケールのあまりに違う地球を、直径約1mの大きさにして、地球上で起こっている様々なことを、表面に映し出しリアルに感じることができるというものだ。台風や津波の発生のプロセスなど刻々と動いている地球を、まるで宇宙飛行士の視点で見たり感じたりすることができる。評価のポイントは、まず何より発想自体の新しさと、様々な最新テクノロジーの集積が “触れる地球”というわかりやすいインターフェイスに収斂されていることだ。審査委員の間でも、これがまさに新しいコミュニケーション・デザインだという声があがっていた。
もうひとつは、WEBで行われている企業の環境活動のひとつである「エコトノハ」だ。インターネットの本質を生かしながら、一人一人のメッセージや気持ちで樹が育っていくというアイデアを、緻密にデザインしている。ビジュアルの完成度、時間軸でのデザイン、さらには操作性の生理的な心地よさなど、感覚の領域のデザインコントロールまでされていることが評価のポイントとなった。

 金賞を受賞した2点に共通するのは、地球や環境という21世紀の大きな課題を鮮やかに反映していることだ。質の高いものが少なくなかったこのカテゴリーで、特にこの2点が評価されたのは、発想の新しさと時代性を反映させているところが大きい。その一方で、書体のデザインが2点グッドデザイン賞を受賞したが、様々なデザインを生み出すインフラとも言うべき地道で時間のかかる仕事も評価された。また「ジェレイドクラッシュワックス」は、クラッシュからくる、蓋のゆがみというデザインモチーフを取り入れている革新的なパッケージであった。

 コミュニケーションはメッセージであり、審査の過程では、そのメッセージがきちんと伝わることが、重視された。今回の審査でも、意図のわかりづらいものに関しては、ある基準を満たしていても、評価されなかった。
この部門は、プロダクトの領域よりも表現の自由度があることと、カバーする領域が広いことで、様々な可能性が大きく開かれているカテゴリーだと思う。そこに送り手としての意志や人々のニーズ、時代性をどうやって反映していくか、これからも意欲的なデザインを期待したい。

 
 
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