2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

建築・環境デザイン部門

北山 恒
B02ユニット:環境デザイン
 
審査ユニット長 北山恒

風景に与える賞

 Gマークに「環境デザイン」部門が設けられて4年になる。環境というかたちのないものにグッドデザインという評価をどのように行うのか、対象とするものはどのようなものになるのか、曖昧な広がりがあり毎年検討が重ねられてきた。当初は応募されてくるものの振れ幅が大きくて、環境資材や外構部品から都市インフラ施設まで多様であった。今でもカバーする領域はGマークの部門の中では最も広いのかも知れない。

 今年の審査をおこなってみて、環境デザイン部門で扱う対象は「私たちが目にする風景と、その風景を作り出す要因となっているもの」であると言ってよいと思う。応募されたものを審査に行くと、その対象としてはランドスケープ、タウンスケープなど風景をみているということが実感できた。それは外構の広い建築、公園的なもの、分譲団地などの地区設計にかかわるもの、または私たちの生活を支える社会基盤となる施設などである。目隠しフェンスなどの外構部品やオブジェのような目に見える単体のものの応募もあったが、他の部門への変更を問い合わせたりした他は1次審査を通過しなかった。分譲団地などの地区設計に係わるものは応募点数が最も多いのであるが、応募が多いからこそ最も審査も厳しくなる領域であった。テーマパークのように閉じた環境を創っているものは評価されなかった。周辺環境に対する提案があるもの時間的継続を大切にしようとするものが1次審査を通過した。金賞受賞となった「東雲キャナルコート」は周辺の事業者との調整が行われ、外部空間の設計に公園や空地などとの連鎖をねらった戦略が設けられていることが高く評価された。同様に「フルキャストスタジアム宮城」は県立公園のなかにあるのだが、球場が孤立するのではなくその公園と連繋するプログラムが盛り込まれていることが評価された。

 審査基準として「パブリックな内容をもつこと」と「時間空間的に連続性をもつこと」といえるのではないか。環境というものは私物化されるものではなく誰でもがアクセスでき、しかも連続した体験ができるものではないか。だから環境部門は曖昧な広がりをもつことが大切なのかもしれない。

 今年は工事現場というテンポラリーな状況に対応するデザインや仮設建築の応募が5件あった。いずれもレベルの高い仕事であり、時間のなかではかなく消えていくものであっても人の心に残ることで未来の風景を創っているとして評価した。さらに「瀬戸内の港町 鞆における空家再生」というまちづくりをおこなっているNPOの活動をGマークの対象とした。今後はこのような「風景を作り出す要因」となる活動こそが環境部門の大きな対象に展開すると考えている。そこで、グッドデザインは市民活動や行政の活動などの「目には見えないもの」を対象とすることになる。

 
 
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