2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

森山 明子
A11ユニット:エンターテーメント、ホビー、アミューズメント、知育・教育関連商品・設備、公共機器・設備/公共交通、高齢者・ハンディキャプト関連商品
 
審査ユニット長 森山明子

 このユニットは実に多彩な商品を包含している。
高齢者・ハンディキャプト、エンターテーメント・ホビー、アミューズメント関連、教育関連用品・設備、公共機器・設備・交通、5つのカテゴリーだから、知育玩具から新幹線車両まで幅が広い。

 応募点数は160点。今年目立ったのは、路面電車、リニアモーターカー、地下鉄車両、新幹線車両と、多数寄せられた新型車両である。審査委員は九州、中国、四国を全員で回り、二次審査会場の公開プレゼンテーションに5車両が登場するという記念すべき年となった。「5100形グリーンムーバー」は初の国産超低床車両であり、「特急ロマンスカー50000形」は小田急電鉄を代表するロマンスカーの新型、「リニモ100L」は愛知万博用に投入され、「800系統新幹線」は待望久しかった九州新幹線を走る。エネルギー効率の良さなどから鉄道が見直され、そうした風を受けて鉄道車両がグッドデザイン賞に戻ってきた観がある。800系新幹線の投入をもってJR九州の車両全体にデザインマネジメントの特別賞を、新型ロマンスカーを「ベスト15」に――。こうした希望は実現しなかったのだが、このユニットの今年の華が車両であったことは間違いない。

 「美しさ」を選出の理由として無条件に挙げることのできる応募があったことも特筆したい。
エコロジーデザイン賞を受賞した薄膜太陽電池・LED一体型モジュール「ルミウォール」、「デザイン・エクセレント・カンパニー」に選ばれたヤマハの電子ピアノ「Clabinova」などである
二次審査の会場で審査であることを忘れさせる圧倒的な魅力があった。工業製品はこんなにも精緻で、こんなにも美しい。先端技術を搭載しつつ、これ以上はないと思われる優美かつ簡素なスタイルは日本のデザインのアイデンティティーを記すものであり、その意味で「未来を拓くデザイン」と言うにふさわしい。

 ただ、多彩な商品を包含するユニットだけに、解決されない問題も散見された。ユーザーにどんなサービスを提供するかという全体像を掴まないままに機能部品を集合させただけの福祉関連機器が応募された。知育用品、アミューズメント分野は概して低調だった。先に挙げた製品が大手企業によるであり、こここで問題としている製品の多くが中小の企業によることは必ずしも評価が分かれる理由とはならない。中小企業長官賞を受賞したアトリムの「カイトプレーンレスキュー」、TOAの「メガホン」など、デザイナーと企業との共同作業によってブレークスルーをなし得た例もあるからだ。

 生活者に多様な選択肢を与えることを使命とするデザインと、社会のインフラとしてのデザイン。こうした両極にあるデザインが豊かになることがデザインの未来だと思えなくもない。その意味で特異なこのユニットから、さらにエクセレントなデザインが生まれることを望んでやまない。

 
 
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