2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

井上 斌策
A09ユニット:オフィス雑貨・家具・設備、店舗用品・機器
 
審査ユニット長 井上斌策

 このユニットの審査対象は、一般的ステーショナリーからオフィスワークを円滑に処理する電気および電子器機類、テーブル・チェア−・ロッカーといった什器類、また、銀行・量販・飲食、あらゆる店舗の顧客対応機器類など、多岐にわたっている。日常の業務や生活の中でなくてはならない必需的要素の強い商品が多く、個人ユーザーの嗜好や所有欲をことさら喚起させる必要性が少ないといった点や、店舗などの顧客対応器機のように異なるユーザーが同一の商品に接するケースなど、開発にあたって多くの難しい問題をクリアしなければならない分野でもある。
この事は、ユーザーフレンドリーな視点を充分にクリアしつつも、時代性や特化した感性面において秀でたデザインを展開するオーディオや電子機器・コンピュータ関連商品などに比べ、特にフォルムやカラーリング面への対応の難しさといったハンディを背負っている。しかし、デザインの重要性が今日ほどグローバルに再認識されている時はない。海外からの応募を見ても優れた商品は年々その数を増している。基本的要素をクリアした「良いデザイン」は今や当然の事であり、デザイン・生活・産業・社会の多面的探究や、未来に向けて積極的に快適な価値を生み出そうという取り組み自体が求められている。

 こうした背景も含め、今回の審査においては前回に比べより厳しい審議を繰り返した。その結果、受賞率は前回より大きく低下したが、3,000件を超える応募の中から見事「ベスト15」に輝いたコクヨ(株)のキャンパスノート〈パラクルノ〉のような優れた商品が表れた事は、「グッドデザイン」を考える上で大きな成果と言える。これは、ノートが持つ本来の特性の掘り下げと、“これこそユニバーサルデザイン”といった着目点を見事に結集させた逸品である。
また、中小企業長官特別賞を受賞した森田アルミ工業(株)のオフィス向けパーテーションユニットは、従来の画一的なオフィス什器とは一線を画した発想の商品で、ワーキングスペースに機能的で優雅な表情を創り出し、次の時代への新しい提案を含んでいる。オフィス雑貨分野では、使う側の状態を細やかな視点で掘り下げた提案が多くなってきた。これはデザインが成熟してきていることの裏付けであろう。

 ただ一方、人にやさしい視点といった当然本来の優れたデザインに内包されるべき要素を、何もかも時代の流れと市場第一主義的視点のみで切り取り、それを「ユニバーサルデザイン」とうたった未成熟商品も多かった。もっと、身近で、快適について真摯にとらえた開発姿勢を望みたい。
設備分野に於いてはオフィスデスクやチェアにエルゴノミクスやバイオ的視点を取り入れる開発努力の後が多く見られた。この事は評価出来るが、それが過剰になり過ぎて全体空間との不調和やユーザー視点不在も感じられるモノも多く、サスティナブルな視点をより重視する必要があるように思えた。

 全体を通しては、今回も前回、前々回と同様、カラーリングやメーカー主張のロゴの取り扱いの不味さでせっかくの受賞を逃した商品が多く、残念であった。一方、店舗用什器およびそれらに附随する器機、また店舗用小型ネズミ駆除器のように、従来あまり目を向けられなかったバックヤードにおけるメンテナンス商品などに優れたモノが多かった事は、遅れていた分野にデザインの必要性を説く上で大きな成果であった。

 
 
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