2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

山村 真一
A08ユニット:作業工具、産業機械、搬送機器・車両/試験機器
 
審査ユニット長 山村真一

 2005年度の全応募件数は3,000件を超え、50年間続いたGマークの歴史の新しい第一歩を記録した。このユニットが審査担当した作業工具、産業機械、搬送機器、車両/試験機器においても、通年に比べ応募件数が多く、デザインレベルも年々高くなってきていることが強く感じられた。そして今、日本経済の牽引役である自動車業界など「ものづくり産業」を根本で支える元気な生産設備産業や工具、機器産業の勢いが審査会場にも現れているようであった。

 この部門は、機器や部品の持つ機能特性がデザイン審査の重要な基本要素となるため、機能の確認には充分注意を払い、相当な時間を費やした。そのため、申請書類や使用データが不足しているという理由で評価点が低くなってしまった商品も多く見られた。特に、海外製品やパネルでの展示を行った応募商品にその傾向が強かった。逆に今年は大型設備機械等のスケールモデル出展により,使用状況がわかりやすく工夫された例や、ビデオ録画や映像データによる取り扱い資料を付けた出展も多く見られた。これらは、機器のシステムの開発プロセスや決定プロセスだけでなく、営業ツールやI,R(株主やユーザーに向けての)ツールとしても今後重要な要素となると考えられる。

 金賞候補とまでなった(株)森精機製作所の金型加工用高精度立形コンパクトマシニングセンターは、機械幅850ミリに見事にまとめ上げられたコンパクトでシンプルなパッケージデザインとなっている。また、マシーン前面にピッタリと収納される操作盤は、オペレーターのために心配りされた明快なキー配列やカラーリング、ピクトグラムにより高精度マシーンとしての精緻なインターフェイスデザインが解り易く表現されている。さらに、正面サイドに設けられたマホガニーウッドのミニテーブルやボルトレスの外板取り付けなど、その心憎い気配りも審査委員に好評であった。

 また、この部門からは、2件の商品が中小企業長官特別賞に決定した。ひとつは、(株)英田エンジニアリングの冷間ロール成形機である。未熟なオペレーターにも親切な操作系のインターフェイスや、まるでオフィスマシーンのようなカラーリングのフルパッケージングされた外観は、6メートル近くもある長尺寸度のハードマシーンがいかにも身近なソフトマシーンとして感じられるほどの仕上がりとなっていて、審査会場では話題の1点であった。
もうひとつは、長野工業(株)の高所作業車NUZO909Dである。複数の作業者による作業を可能とした大型のプラットフォームが高所に設けられているにもかかわらず、実に安定感のあるシンプルなボデー全体のデザインは、使用される街の景観にも一役買うことになるだろう。

 この2件の特別賞受賞商品は、中小企業はもちろん、大企業にとっても産業用機械や設備のデザインに対しての考え方に一石を投じるといっても過言ではない。また、専用機械においては、専用オペレーターの接点しかないという過去のデザイン不要論から、専用機械こそデザインが必要なのだという考え方に変わりつつある状況が、応募商品の各所に見受けられた。このような点でも、心強さを感じた今年の審査であった。

 
 
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