2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

平野 哲行
A06ユニット:家具、インテリア関連商品、住宅設備
 
審査ユニット長 平野哲行

 本年度、当審査ユニットでは300点近くの審査対象があった。その分野も「家具・インテリア商品」、「住宅設備」と2つのカテゴリーに分かれ、全体的に商品のバリエーションが多いユニットである。

 全体として印象的だったのは、デザインを単なる一つの手法と考えずに戦略の中心として取り入れた企業と、相変わらずものづくりの中の一要素としてしか扱っていない企業との差が、如実に見えてきたことだ。デザインに対して投資することにより、会社自体のイメージアップやブランディングに成功している企業は、次世代のリーディング・カンパニーになり得るべく、様々な面で次のステップに移っていると感じた。

 「家具・インテリア商品」の分野では、どこかで見たことがあるようなオリジナリティの感じられない応募商品が数多く見られた。その中でも2つのオリジナルな商品が特別賞を受賞した。まず、金属の椅子をテーマに、非常に上手いデザインで魅せてくれたのは、(株)シバサキの「アルミ椅子」だ。一般的に金属製の椅子というのは、冷たい、硬い、などのイメージがあるが、アルミの柔軟性や金属のクッション部分を上手く活かし、やさしいかたちを生み出した。アイデアと素材とのマッチングをどのように処理するか、デザインコンセプトが明確になっていた商品であり、その結果中小企業庁長官特別賞を受賞した。また、「和紙ランプ」で同賞を受賞した谷口和紙(株)の場合は、和紙を立体の型におこすことにより、今までにない和紙の深い味わいと形の美しさを再現した製品であった。

 「住宅設備」の分野では、旭硝子(株)「窓 ビューライトFSW」が金賞を受賞した。日本の伝統的な引き違いサッシの考え方を変え、眺望や開閉機能にユニークな特色を持つ窓である。特にユニークなのは都市の住宅デザインの外観にマッチする凸凹のないフラットなガラス面。これが上手く実現され、機能面では独自の開閉機能を内蔵するユニークな窓が完成した。我々建築家にとっては悩ましい「ガラス面の表情の違い」に対して良い解答をくれた商品である。住人のセンスの良さを外にアピールするという面でも、このサッシは存在感があると言える。

 エコロジーの観点で注目すべきものは、松下電器産業(株)の「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」だ。今後は地球温暖化も含め人類全体の環境に対する考え方に挑戦していかなければならない。そのような意味で注目すべきものとしてエコロジーデザイン賞を受賞した。これは単に商品として優れているということだけでなく、各家庭に「地球環境のために自分たちは何ができるか」と考えさせるきっかけとなるものでもある。今年の話でいうと、1997年「京都議定書」の中で地球温暖化に影響のあるガスを各国ごとに削減値を設定し、日本は温室効果ガス6種類の排出量を6%以上削減の目標を立てたが、各家庭の電気、その他エネルギー使用量が増えたことにより、まだまだ日本は削減目標値を達成できていない状況だ。これに対してこの商品は、一つの新しい試み、挑戦といった形で注目すべき製品である。

 年々成熟の感があるシステムキッチンは、企業間の格差が非常に大きく感じられた。キッチンの空間とトータルでのデザインを考えた総合力のある商品がある反面、まだまだ色も形も全てバラバラで、ただ色々なものを取りまとめてシステムキッチンといっているような企業も目に付いた。デザインに関して戦略的に洗練された一つのテイストが確立された企業と、逆に個々の小さなディテールや製品一つ一つをバラバラにデザインした企業との差が如実に出たと感じている。

 また同様のことが、建材分野にも言える。例えばエクステリア商品や空調など、使う人の空間や時間までもデザインしている製品があったと感じる反面、デザインの処理が全くされていない商品もあった。

 衛生陶器、ユニットバスなどは、個々の企業および製品の格差が非常に広い分野であるが、特に総合力を持ったTOTOブランドの商品群は、すべての商品を並べても調和の取れたものであると感じた。

 住宅用補強材に関しては、施工のし易さ、木の使われ方、材料取りを上手く省エネ的に効率良く作っていくような提案も見られ、この分野に於いてももっと日本の中で語られるべきものだと感じた。

 
 
GDA2005logo