2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

益田 文和
A05ユニット:調理・食卓商品、調理家電、生活家電
 
審査ユニット長 益田文和

この部門にはいくつかの商品ジャンルが混在している。

調理・食卓商品

 カトラリーは、かつて主流を占めていたオーソドックスなスタイルのフルセットはほとんど姿を消し、やや実験的とも思える提案型のデザインがいくつか見られた。そうした試みが、かつて圧倒的優位を誇った新潟県燕市をはじめとするステンレス洋食器産業に再び勢いをつけてくれることを願い、積極的に評価した。グラスや食器類の中にはデザイン的に完成度の高いものが少なくなく、相対的に厳しい審査結果になったかもしれない。保存容器にも機能性を重視した意欲的なデザイン開発の成果が見られた。

 調理小物類はその性格上どうしても便利なアイデアと価格が先行しがちで、デザイン的に優れたものが見つけにくい。そんな中でもトロイカのアップルスライサーという道具はステンレスの円盤のような単純な構成でありながら、今までとは違うりんごのむき方を提案していて興味深かった。調理器具では南部鉄器協同組合の鉄瓶が地域の伝統産業とデザインのコラボレーションの成功例として注目された。オッティモのフライパンもシンプルでありながら、細部まで使い勝手と造形に気を配ったデザインが美しく、高く評価した。

調理家電

 調理家電は例年以上に厳しい審査だったが、オーブン、レンジ類の中ではサムスンの電子レンジの美しさが印象的であった。このジャンルの製品のデザインでここまで意欲的な提案ができるということを、日本のメーカーも再考すべきである。炊飯器のデザインは相変わらず不可解な形が並んでいて、審査員一堂どう評価してよいものやら戸惑うばかりであった。ジャーポットも同様であるが、わずかにプラマイゼロの電気ジャーポットが新たな可能性を見せてくれた。食器洗い機のデザインは以前に比べるとだいぶ整理されてきたように見える。

生活家電

 冷蔵庫にはさまざまな付加機能や操作性に重点を置いたデザインが見られるようになってきた。しかし、元来扉の開け閉めや引き出しの出し入れ以外に、複雑な操作は必要なかった製品であるだけに、新機能をコントロールするための操作系を付加するのであれば、もっと分かりやすく、ご操作を防ぐ工夫をするべきである。今年から海外市場向けの製品も応募できるようになったが、仕向け地のユーザー事情に関する情報がないと判断しづらい場合もある。

 暖房機器のデザインは停滞気味であるが、トヨトミの石油ストーブは、今や知られざる輸出ヒット商品だそうだが、スタンダードな美しさを守っていて好感が持てる。空気清浄機や加湿器、除湿機は単純な機能を持った製品であるだけに、表面的な形で違いを主張することに汲々としていて、本質的なデザインの評価がしにくい状況である。プラマイゼロの加湿器がひとり異彩を放っていた。

 洗濯機は、なんといっても松下電器のドラム式洗濯乾燥機がオリジナルの強みで高得点を集めた。掃除機はサイクロン全盛の感があるが、Panasonicの海外市場向けデザインが大変好印象で、なぜ国内のマーケットにこれくらいのデザインが投入されないのかはなはだ疑問である。シルバー精工のコードレスサイクロンも革新的なデザインとして高く評価された。

結果

 冷蔵庫にはさまざまな付加機能や操作性に重点を置いたデザインが見られるようになってきた。しかし、元来扉の開け閉めや引き出しの出し入れ以外に、複雑な操作は必要なかった製品であるだけに、新機能をコントロールするための操作系を付加するのであれば、もっと分かりやすく、ご操作を防ぐ工夫をするべきである。今年から海外市場向けの製品も応募できるようになったが、仕向け地のユーザー事情に関する情報がないと判断しづらい場合もある。

 
 
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