2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

戸谷 毅史
A03-2ユニット:PCおよび関連商品、ソフトウェア
 
審査ユニット長 戸谷毅史

 本年度の当審査ユニットでは、海外企業からの応募数の多さが特徴的だった。これまでグッドデザイン賞の審査対象は、国内市場で販売される商品、日本で実現されたものごととしていた。しかし今年度から、日本のみならず、様々な国・地域で販売される商品を審査対象としたこと、グッドデザイン賞自体のプロモーション活動をインターナショナルに(特にアジア地域に対して)展開したことが、海外からの応募が増加した要因だと考えられる。

 ユニットとしての総応募件数212件の内、70件(約1/3)が海外企業からの応募であり、台湾、韓国、中国からの応募がそのほとんどを占めていた。中でもノートPC、LCDディスプレイ、マウスなどに関しては、相当数がアジア各国から応募されており、市場規模の大きさを考えさせられると共に、この分野における国際競争の激化を思い知らされた審査だった。

 グッドデザイン賞と言う制度もしくは運動が、日本と言う空間的な枠組みを越え、世界に開かれたものになろうとしている中で、どのようにしてGマークらしい視点を構築すべきなのか。審査委員は良い意味での緊張感に包まれながら審査を行うことができた。

 本年度「PCおよび関連商品」の分野では、昨年度に引き続きノートPCの比率が高かったが、形状の細部の処理やグラフィカルな側面でのクオリティが向上しており、所有する喜びを感じさせる製品が増えたとの印象を持った。この点は、海外製品の一部がまだ及ばない部分でもあり、新興メーカーには、今後の展開の参考にしてもらえるものと思う。

 また、デジカメやPCの一般化に対応し、高機能、高性能でありながら使い勝手の良いプリンタや複合プリンタが増加したことも今年度の特徴のひとつだろう。使用環境や使用者の習熟度に適合させようと言う試みが、製品として実を結ぼうとしている様子を見る事ができた。

 その他、周辺機器の中にも、小粒ながらデザインの力を感じさせる製品が増加したように思う。中小企業庁長官特別賞もこの領域から受賞しており(メモリリーダライタ エレコムMR-DU2A7シリーズ)、脇役でありながらも使用頻度の高い小物にこそ、上質なデザインが必要だとあらためて感じた。

 ソフトウェア領域には、教育用ソフトやDJソフトなどの個人ユースのもの、電子カルテシステムや乳癌検診用ソフトなどプロユースのもの、顧客ニーズの収集を図るCRMソフトやグループウェアなどのビジネスコミュニケーションツールなど、広範な分野からの応募があった。これら用途の異なるソフトウェアを一律の基準で比較することはできないが、何れにも共通する事項として、グラフィカルな表現、画面遷移の状況、視覚障害などを考慮した視認性、操作性、ユーザビリティの高さなどに重点を置いて評価を行なった。応募された製品の中には、これらの要素を高度にまとめあげた製品があった反面、ユーザの姿を全く見ていないとしか考えられないものもあり、製品分野としてのばらつきの大きさが気になった。

 ソフトウェアにGマーク、と言う概念がまだまだ浸透していない事を痛感させられている。今後、より多くの応募が成される事を期待したい。

 
 
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