2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

長濱 雅彦
A02ユニット:日用品・ガーデニング用品・雑貨、スポーツ・アウトドア商品
 
審査ユニット長 長濱雅彦

 日用品、ガーデニング、スポーツ・アウトドアを対象としたユニット。応募総数225件中合格は68件(合格率30.2%)で昨年よりかなり厳しい結果となった。中でも日用品は低調(合格率24.8%)で、主観としてその理由を挙げるとすれば、今日流行するミニマルな住空間イメージと量産日用品デザインとの間に生じた微妙なズレ(質感の差異など)が、新たな違和感としてはじめて認知されたからではないか、と思っている。

 話題性No.1は、マイクロプロセッサー搭載のランニングシューズ「adidas 1」。昨年もエントリーがありながら現物が間に合わなかった二年ごしの恋人である。はじめての部分が多い商品だけに発売後の状況を把握すべく現物プレゼンテーションまで実施した。機能面等に対し賛否両論あり惜しくも金賞までは届かなかったが、閉息感ある市場を何とか打破しようという強い意志は称讃に価する。日本のスポーツメーカーも独自の哲学で迎え撃ってほしいものだと感じた。
このユニットからは松下電器産業(株)の「電池がどれでもライト」、東芝電池(株)の「LEDライト(WEARABLE-STAR)」の2つが金賞に輝いた。ともにユーザビリティ、ユニバーサル、安全・安心という時代の空気を見事に表現した逸品で、価格面から見ても企業の社会貢献姿勢も充分。2大メーカーの懐の深さにあらためて敬意を払いたいと思う。

 また、中小企業庁長官特別賞を受賞した(株)コーゾーデザインスタジオを中心とした地場伝統産業グループの連携が産み出した新しい仏具提案「かたり箱」シリーズには、今後の日本製品のあり方を示唆する一歩踏み込んだ商品づくりが見て取れた。その開発プロセスは、スタイルとマーケットに翻弄され"魅力"を創り出せない今日の形式的企業戦略とは一線を画す。どちらかと言えば工芸的一歩踏み込んだ世界ながら軸足はしっかりとデザイン領域に置かれた成熟した戦略と言える。長年Gマークの領域外と見なされてきた世界が新たに開拓されたかたちだ。事実、デザイナーの佐藤康三氏は仲間のデザイナーに対し「Gマーク受賞は難しいかも」と明言していたと聞く。都市の時空にマッチするモノのみがGマークの対象になる中で、"見続けられるデザイン"がそこには潜む。長時間の眼差しに耐え得る高度な技術から生まれた細部のディテールは、これまでの日用品デザインや工芸作品とはあきらかに違う、新しい日本デザインの潮流になり得る可能性を感じさせる。

 ともあれ、理由ははっきりとカタチづけられないが、世紀が新たになって5年以上が過ぎ、様々な点で小さなリフレッシュポイント(祭りの後)を迎えている事を今回の審査で感じたのは私だけではあるまい。あえて誤解を恐れずに提言すれば、昨年まで"グッド"なものがそう見えなくなる。そんな時代に突入したと言っていいだろう。

 
 
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