2005 Outline

2005年度グッドデザイン賞審査総評

商品デザイン部門

國本 桂史
A01ユニット:身のまわり、健康・美容商品
 
審査ユニット長 國本桂史

 この審査ユニットでは、私たちが生活する上でとても身近な「身のまわり商品」と、これからの高齢化社会やアンチエージングといった傾向の中で必要とされてくる「健康管理・美容商品」という商品ジャンルを含んでいる。これらは社会と産業の関係を日常の文化レベルで直接反映しているカテゴリーであり、言い方を変えれば、私たちの現在の生活まわりがよく見えてくる、生活文化のデザインレベルのマーカーでもある。

 本年度の動向、傾向をみるとカタチだけの目新しさを追いかけているデザインは、非常に少なかったと感じられる。

 「身のまわり商品」のジャンルでは、人間の生活への深い理解と工業生産という産業との関係が高いレベルで成熟してきていることを伺わせるものであった。商品を生み出す工業生産と言う行為の中にも、リサイクルやロングユースということから、使用エネルギーを少なくするといった使用方法までにも継続的社会をデザイン的に意識したものが例年以上に増えてきている。その中でも注目された商品をいくつか挙げたい。

 まず、ドライビングサングラス「ozniS」。ドライビングサングラスはいままでにも様々なアプローチでデザインされてきたものがあったが、自動車を運転している時、万が一に発生する事故状況に対して積極的に考察を行なったものはあまりなかった。今回受賞した商品は自動車雑誌とのコラボレーションを行い、生産からの視点にジャーナリズムの視点も加わることにより商品づくりの視点を複眼的に持った開発になっている。エアバッグ作動時にレンズが割れずに外れることなど、新しい試みが反映されたデザインになっている。また、アシックスの「看護師用シューズ」などは通気の穴にメッシュを採用することにより安全性を確保し、注射針等からの足を守る安全仕様でありながらファッション性も有している。そして、繊維製品では赤ちゃん用のベビーウェア「クオーレ・アモーレ」が今までのようなスタイリングだけ先行してきた商品づくりではなく、「素材のデザイン」といった機能や素材の開発といったところで、日本の高い技術を利用し、それをスタイリング・デザインの中へと高いレベルで調和させている。これなどは、これからの日本がファッションデザインで進めていくうえで新しいアプローチになるだろうと感じさせる。

 「健康管理・美容商品」のジャンルでは、マッサージチェアを例にするといままで医療機器的な雰囲気を持ったものが多かったのだが、ソファ感覚のものや、ソファとのセットを前提にデザインされているものなど、「リビング」という生活場面を商品から感じさせられるものが現れてきている。これはマッサージチェアというものが、生活の中にようやく本格的に定着してきていると言うことだろう。

 このように生活とデザインの新しい関係ができつつあることを感じさせてくれた。この調和関係がより良い方向で進むことを願うものである。

 
 
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