Good Design Award 2003 Winners
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審査委員/審査講評
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GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

新領域デザイン部門

西山浩平

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未知の市場の開拓

「えてしてわかりにくい」これが新領域デザイン部門に寄せられる審査対象に共通する印象であろう。展示してあるものは、機構が剥き出しのワーキングモックや、概念図だけのパネルだけの場合もあるので、他の部門に比べるとそのような印象を持たれるのは仕方のないことと思う。そのようななか、我々審査委員は見た目の印象に惑わされることなく、できる限り本質的にそれがどのような未来を切り開いているのかを探ろうとすることで評価を試みている。一見つまらなそうなものでも、そこに将来の可能性があれば、ポテンシャルに重きをおいて評価している。未来の市場を開拓しているかが評価の基準となっているといっても過言ではない。審査を通じて産業界には、次の3つの市場を示唆する商品に将来性を感じさせられた。

身体(シンタイ)

ウェアラブルを新領域でどのように評価すべきかが議論になった。その結果、審査員の中にウェラブルであるかということよりも、身体が抱える問題を解決するということを積極的に評価していくべきだという共通の見解を持つことができた。身体の機能補完としてのプロダクトは出てくる可能性がまだまだ多く、未活用の部位も多い。単純に腕などに装着するものから始まって、内臓や皮膚などの主要器官の代替となる人工臓器、体内に取り込んで検査や治療を行うカプセル治療などがこの分野で期待される具体的な候補例である。身体の周辺には、解決されていない問題がいかに多いかに気付かされる。この潜在市場の規模は実に大きく、ここでデザインが果たせるエリアも大きい。

ストック資産の活用

インフラに多大な投資をしてきた日本が進むべき道のひとつとしてストック資産の有効利用があろう。古くなったマンションのリニューアルに始まり、都市再生につながる試みは大いに新領域で奨励すべきジャンルである。歴史建造物の保全や、地方の観光資源の価値向上も同様に重要である。無形ではあるが、工場や職人が長年蓄積してきたノウハウや技術を産業資産ととらえ活用していく試みもぜひ応援したい。消費行動そのものを変えてしまうような買い取りを前提にした単なるリサイクルに終わらない小売形態なども、一度流通した耐久消費財の再活用策として注目に値する。

エネルギー

これまでは大企業にしかできなかったこと、大きな資本を必要としていたものが、テクノロジーやサービス提供の仕方の変化によって手の届くものになってきている。このような一般化に大きく寄与しているものを今後奨励していきたい。家庭用のコジェネレーション、小規模の汚水槽の汚水分解システムなどがそれに該当する。圧倒的に安くする、概念を変えることで誰でもが手に入るようにする、などがこの分野でのアプローチであろうか。

技術だけのもの、構想だけのもの、コンセプトだけのもの、今後はこれらもこの審査部門で扱うことができればと思っている。言うまでもなくデザインは問題解決のための手段である。もし今日のデザインの範疇に解決できない領域があるなら、その領域での解決策を見つけることはデザインの社会における役割を高めるにあたって重要である。たとえそれが未完成であっても、将来性があるなら積極的に応募するように奨励していきたい。新領域デザイン部門での評価によって、かつてはSFでしか存在しなかったものが近い将来に、現実のものになっているとするなら、この部門の審査に関わった者としてこれ以上の誉れはない。

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