Good Design Award 2003 Winners
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受賞結果速報
審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

建築環境デザイン部門
環境ユニット

内藤 廣

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環境部門は今年で2年目。応募する側も審査する側も手探りで進んでいる、というのが正直なところです。私の経験では、賞というのは応募する側と審査する側の双方でその価値を築き上げていくのものだと思います。良い作品が選ばれれば、選ばれる価値も上がり、次に応募する側の意識も変わってくるというわけです。その観点からいえば、環境部門は、昨年、これ以上ない滑り出しをしたといえます。モエレ沼公園が大賞を、四国横断自動車道・鳴門エリアのランドスケープが金賞を受賞しました。 不足の点をいえば、まだまだ応募の母数が少ないことです。応募の点数が多ければ、選考の過程でさらにレベルの高い議論ができるのですが、少ない中では応募作の優劣もおのずとはっきりしてしまい、すぐに合意ができてしまいます。たくさんの応募をいただけるよう、これからも引き続き努力が必要なことはいうまでもありません。

読み取れる問題

応募の母数が少ないことに関しては理由がないわけではありません。比較的大きな事業規模の環境部門では、公共の仕事が必然的に多くなります。ところが、この場合、主体が国や自治体そのものである場合がほとんどで、ここが大きなネックなのです。建築の場合は、特殊な例を除いて設計者に著作権が担保されているので、設計者が自分の意志で応募することができます。ところが、都市計画系や土木系の公共事業では、原則として事業主体が名目上設計主体になるのがほとんどですから、実際に手を動かしたりアイデアを出したりして汗水垂らしているデザイナーや設計者は、自分の意志だけでは応募しにくいという実状があります。 しかし、だからといってこのままでよいわけはありません。街づくりや環境づくりは、これまでもそしてこれからも我が国の大きなテーマであるにも関わらず、その良否や質的評価に関してはアンタッチャブルのままでした。国土交通省は「美しい国づくり政策大綱」を発表しました。そこには量から質への転換がうたわれています。しかし、一般市民を巻き込んだ世論の支持がなければ、質的評価などしようもありません。その意味で、景観や風景形成といったところに踏み込んでドンドン評価をしていこう、こうした分野に関わるデザイナーや設計者を積極的に評価していこう、というグッドデザイン賞の試みは、きわめて先鋭的で過激であり、その意義も大きいと思います。これは、世の中の制度全般に対する作り手の側からの投げ掛けなのです。

総評

審査対象の全般的な傾向を展望すると、デザインがきれいにまとまり過ぎているものが多く見られるのが物足りない点です。最高の価値を目指すなら、きれいさは必要条件であって十分条件ではありません。この国の風景や景観、外部環境をより高いレベルで成熟させていくには、もう一段踏み込んだ取り組みが必要ではないかと思います。きれいであることは大切です。でも、根底にある大きな問題や矛盾を覆い隠してしまうようなきれいさなら、そんなものはないほうがよいのです。これからのデザイナーや設計者に求められるのは、問題や矛盾に分け入って、それを誰でもがわかるような形に翻訳することです。本当の美しさとは、その過程で自然と備わり生み出されるものの格の高さのことをいうのではないでしょうか。 ともかくたくさんの方に勇気を持って応募していただきたいと思います。賞というのは広場のようなもので、たくさんの応募対象が集まれば、その切磋琢磨する熱気の中から次の時代の指標となるようなものが生まれてくるものです。その視点でこの賞を育てていただきたい。来年に期待したいと思います。

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