Good Design Award 2003 Winners
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審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

建築環境デザイン部門
建築ユニット

隈研吾

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2003年という年号が、もし後生にも記憶されるとしたならば、俗に「03問題」と呼びならわされている、一連の巨大再開発の同時竣功を通じてであろう。六本木ヒルズ、汐留、丸ビル、品川などの東京都心部の大規模再開発が、偶然(必然?)この年一気に完成した。この部門にも、そのうちいくつかの作品の応募があり、その評価は分かれた。「03問題」とは何だったのか。何がこの偶然を生み出したのか。
見方はいくつかに分かれる。ひとつは都心回帰現象の必然的結果だとする見方。IT化による産業構造の変化、労働形態の変化、少子化、高齢化などが、都心回帰を生んだという点では、ほとんど誰も異論がない。
企業という大きな「公」に帰属して、郊外という居住専用の環境に通勤労働者として隔離されていた個人が、生活をエンジョイする「私」として、文化も商業空間も充実している都心に、“働きかつ遊ぶひとりの生活者”として帰ってきたという構図である。要約すれば、公から私へ、働から遊へという歴史的大転換である。
問題は、03に出現した大規模開発がその転換にこたえるソリューションたりえているかである。否定的見解によれば、1920年代のバブル期に発明された、スカイスクレーパー+商業+広場という20世紀型再開発から、「03」達は一歩も進歩していない。都市の一区画を破壊して、そこに超高層を建てて容積をかせぎ、低層部は商業と広場で都市性を構築したかのごとく装うフィクショナルなプロジェクトということになる。肯定的見解に立てば、そこには20世紀型を超えて、再開発という閉じたエンクロージャーを都市へと開くさまざまなアイディアが発見される。例えば六本木ヒルズのけやき通りに見られるストリート型にぎわいや、丸の内の仲通りに見られるリニアな交流空間。
議論は別れたが、最終的に最も評価されたのは、ジャン・ヌーベルのデザインによる「電通本社ビル」であった。そこにはひとりの突出したデザイナーによる、スカイスクレーパーという陳腐化したプロトタイプに対するクリティシズムが見いだせたからである。
では大規模再開発にかわるソリューションがあったかというと、結果はまだまださみしいものであった。既製市街地を守りながらリノベーションしていく案も散見されたが、都心を再生させていくパワーとデザインの切れ味では、まだまだ見劣りがした。
マンションやプレハブ住宅が、前述の大転換にどう対応しているかにも興味があった。しかし、正直に言って、結果には失望した。公から私、働から遊へという転換が急速に進展しているにもかかわらず、ディベロッパーによるマンションの多くは、既製の間取りとデザインテイストを超えられず、せいぜいロビーと外部空間のデザインらしきごまかしでお茶をにごす程度であった。せめてもの救いは、プレハブの中にいくつか、既製の紋切り型を超える清新なデザインが見いだせたことである。デザインの独断に陥らず、住み手である「私」の自由と遊びとを許容する、明るく開かれた建築をいくつか見いだすことができた。時代は走っている。しかし、デザインはまだ眠っている。

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