Good Design Award 2003 Winners
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受賞結果速報
審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

商品デザイン部門
ユニット11:公共機器・設備/公共交通関連機器・設備、セキュリティ関連商品・設備

田中一雄

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この審査ユニットは、「公共機器・設備/公共交通関連機器・設備」と、「セキュリティ関連商品・設備」が審査対象となっている。受賞率は50%となったが、全体的に見て注目度の高いものは少なかった。結果的に、特別賞を受賞した対象も中小企業庁長官特別賞の1点に止まり、金賞受賞なし、比較的低調な部門という結果に終わった。こうした背景には、さまざまな要因が考えられるが、個別の領域特性による問題が大きいだろう。
まず、公共機器・設備領域は、長期化する公共事業投資の低迷に伴い、関連領域企業全体が活力を失っていることが言える。もはや、かつてのような過剰デザインの展開は必要ではないが、環境や福祉の観点からの新しい提案を見いだし得ていないことが問題である。また、セキュリティ領域においては、急速に進化する情報技術の活用に対して、総合的なデザイン力がいまだ未成熟であったということが言えよう。
各ジャンルの状況としては、デザイン的成熟度に大きなレベル差が見られるものの、セキュリティ関連商品・設備の分野に新しい可能性が見いだされた。特に、個人用セキュリティ機器に関しては、今日のネットワーク技術を活用した新しい提案が見られ、造形デザイン的にも優れた商品が誕生している。これは、従来のヘビーなセキュリティから、よりユーザーに密着したセキュリティへの変革を感じさせるものであり、今後の展開が期待される。ただし、依然として従来の固定概念を脱却していないものも多く、グッドデザイン賞受賞を逃した商品も数多い。この領域は、ITの深化とともに、今後とも大きく変動していく特性を持っており、高度にヒューマンなインターフェースデザインが求められると言えよう。
公共機器・設備/公共交通関連機器・設備の分野においては、公共交通関連機器・設備領域に比較的充実した商品が多かった。特にLRT(Light Rail Transit)や新交通システムのデザインは、国際的に見ても先端的レベルに達しており、充実したものとなっている。これらはクルマ社会の次を担うものでもあり、ユーザーに夢をもたらすデザインが数多く生まれ続けることを願いたい。反面、公共機器・設備領域は、ある種の飽和感があり、未来を拓くデザインが見いだしにくい状況にある。エコ的素材や技術で提案性を見いだそうとしているが、環境経済としての観点も踏まえたより深い考察が求められるだろう。そうした中で、田川産業(株)の不焼成しっくいセラミックスタイルは、優れた環境特性を持つ日本の伝統素材を工業的手法によって現代に活かしたものとして高い評価を受け、唯一特別賞の受賞へと結びついた。

■ジャンル別講評

公共機器・設備/公共交通関連機器・設備[受賞対象を見る

公共機器・設備の領域においては、環境的観点からの提案性を持った商品に比較的優れたものが見いだされた。中小企業庁長官特別賞に輝いた田川産業(株)不焼成しっくいセラミックスタイルのほか、太陽熱を活用し水蒸気の原理により真水を精製するAugustin ProductdevelopmentのSolar Stillはグローバルレベルのグッドデザインとして注目された。また、テラコッタを新しい建築外壁材として大型のルーバーを提案した(株)INAXテラコッタルーバーや、再生木材を活用した屋外照明のヤマギワ(株)アーバンウッド、簡便な構造により多様な緑化舗装を実現する日本興業(株)グラススペーサーなどは、都市景観を構成する優れた景観材料として評価された。公共交通関連領域では、路面電車の岡山電気軌道(株)MOMOや、新交通システムの三菱重工業(株)クリスタルムーバーが高い完成度とデザインの斬新性で注目された。また、地味ながらもLED表示の可読性に配慮し文字表示に工夫を凝らした東海旅客鉄道(株)新幹線列車情報システムもその取り組み姿勢が高く評価された。

セキュリティ関連商品・設備[受賞対象を見る

この領域は、デザイン的レベルのばらつきが極めて大きかった。個人用セキュリティ機器の世界ではユーザーサイドの視点に立った優れた商品が出ていた反面、ロック関係ではピッキングなど今日的問題に対処しながらもデザインの成熟度が低いものが多かった。基本的にこの領域のデザインはあまり目立つことを良しとせず、「地」としての良質なデザインが基本となる。しかし、その中でもインターフェイスの観点から新しい提案が求められるだろう。この点で今回の中では、簡便なシステムで比較的安価にセキュリティの導入ができる商品が注目された。特に、電話線に接続するだけで、携帯電話機からのコントロールが可能となる松下電工「お留守番あかリモコン」は、セキュリティ機器を感じさせないデザインと優れたインターフェイスが評価され、審査ユニットにおける金賞候補となったが、全体評価の中で惜しくも受賞とはならなかった。

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