Good Design Award 2003 Winners
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受賞結果速報
審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

商品デザイン部門
ユニット8:作業工具、産業機械、搬送機器・車両/試験機器

金田博

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この審査ユニットは、使用者に業務的効果をもたらす作業工具、産業機械、搬送機器・車両、試験機器などを対象とする。日本の産業を高い技術力で支え、作業環境や労働環境を向上させ、使用者と生産環境に貢献する商品群である。今年度は60点の商品がグッドデザイン賞を受賞し、さらにこの中から金賞が1点、中小企業長官賞が1点受賞した。受賞率は50%で全体の44%に比べ少し高い受賞率であった。日本では一般消費財のデザインに比べ、生産財の分野にデザインが導入され始めたのは遅く1970年代の頃と言えるが、年々デザインの取り組みが広がってきている。今回の高い選定率はデザインの質が向上している表れであり、このことは一般消費生活では見えにくい分野へのデザインの普及という点で、社会的にも業界的にも歓迎されることと言える。今回の応募対象は、全体的に手慣れたまとまりの良い製品傾向はあるものの、新しい視点の新規性のあるデザイン提案製品が少ない、というのが審査委員の共通した意見であった。
今回、審査の際に話題や議論となった例をとりあげ今年度の傾向や動向を紹介する。金賞となった(株)キトーのレバー式小型巻上兼牽引装置 キトーレバーブロック LXは審査委員全員が一見して高く評価した商品である。この商品は旧来からある装置で特に革新技術要素がある製品ではないが、小型化と緻密なデザインで販売対象をプロユースから一般ユースに広げ、何よりも触って使ってみたくなる魅力をもった商品である。中小企業長官賞を受賞した松本工業(株)のプレススクラップ水平搬送システム ピクシー プッシュタイプは、金属板打ち抜きプレス機の廃材を電気などのエネルギーを使わずに排出し生産性を高める新製品である。加工下請けの中小企業が独自に開発した機能的なデザインで、日本の本来の生産業の姿勢として高く評価した。この他にオリンパス(株)の実体顕微鏡 OLYMPUS SZ61は永年の地道なデザインと技術の積み重ねから機能・使いやすさ・形態を磨き上げた製品として好評を得た。日東工器(株)の空気式ベルトサンダ ベビーベルトン BB-10は従来にない小型工具で、左右どちらの手で握ってもフィット感良く使えるように操作性と機構とを練り上げた製品として注目された。
電動ドライバー・ドリルなど一連の電動工具類については議論のところである。重量バランスやフィット感への配慮は丁寧になされているが、マーケティングに偏った装飾性の強調されたデザインについては一過性的であり、工具本来の長期間使用する特質上、普遍性をそなえた節度ある色彩と造形が基本であることと評価した。一方、機能や技術は評価できるが操作性・造形性や商品性の低い製品も散見された。また、試験器機、生産機械類はデザイン的に意欲的な製品も見られたが、中には小型機でありながらパネル展示申請でビデオなど使用説明資料のない製品もあった。2次審査会後に同会場で開催する公開イベントなどのためにも、一般社会への啓蒙という視点から今後は実機の搬入が望まれる。
日本の生産環境の元気印として、この分野の製品に対してデザイナーは、積極的な魅力ある提案と解決案の実現を行い、経営サイドはデザインが企業の資産であることの視点からデザインとの連携を深め、さらなる社会への発信を期待したい。

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