「情報産業化」への脱皮
インテリア産業が長く低迷している。その原因は90年代以降の建設不況にあると言うよりは70年代に「モノの豊かさ」がある程度達成されたことによるもので、実際この30年間家具家事用品の家計支出は実質ベースで全く変わっていない。その一方で、交通・通信や教養・娯楽といった生活・知的サービスは数倍伸びている。この間社会全般が求めるものが物質価値よりも情報価値にシフトしてきたのだ。従って「モノ」にもまた性能というよりは、イメージや感性が良いことが一層求められ、製造業も情報産業化への質的な転換が問われるようになった。例えばここ数年生活雑貨ショップが家電業界に新規参入し始めている。家電を若いユーザーの好みに合った形にデザインし、しかも彼らのライフスタイルを象徴する売り場で売る、今までにない生産と流通の方法論である。セレクトショップに並ぶ家具や照明といったインテリアではもちろんのこと、近年、住宅設備や建材においてもこのようなイメージ・クリエイティブな手法がとられるようになってきている。
不易と流行
例えば、飛騨産業(株)「WAVOK」は節穴を残した家具であり、また杉材をあえて家具に用いることで日本の森林文化への共感を誘う。また日本の高い木工技術を生かした各社家具メーカーによる無垢材の椅子は、長年使い込み愛着を増すものとしてユーザーのものづくりへの憧れを醸成している。家具そのものの機能にそれを所有し使用する喜びがプラスされるのだ。さらに定番商品として無難なデザインになりやすい住宅設備においても、新しいライフスタイルをイメージさせる商品開発が活発になっている。システムキッチンは各社オープンキッチンの対面プランによって、ニューファミリー層に主婦中心のホームパーティを定着させつつある。東陶機器(株)の「多機能シャワーバー」やシステムバスルーム「発汗生活」は新しい入浴スタイルを、(株)INAXは節水のための新機構「エコダイアル」で省エネ生活を提案する。家具、設備におけるこれらの傾向はいずれも単なる流行ではない。デザイナーには常に生活を見つめる多様な視点と魅力的な商品を作り出す不断の努力が求められる。松下電工(株)が住宅用照明器具の1ブランド名を「不易照明」とした。「不易流行其基是一也」とは、変化するものも変化しないものもその土台は同じという意味だが、時代の転換点にあって今まさにその言葉が活き始めているのだろう。デザイナーには常に生活を見つめる多様な視点が求められている。
住宅投資とデフレ脱却
今の日本がデフレ脱却する早道は住宅投資を重視することだ、という社会的コンセンサスが必要だと思う。まず住宅建設は建築工事ばかりかインテリア、電化製品など波及効果が大きい。貿易黒字は海外再投資によってデフレを招くばかりだが、それに比べ内需代表格の住宅投資は経済を活性化し良質なストックを国内に生む。またリニューアルによって家の資産価値を高めていけば、中古住宅市場も広がりヨーロッパのように長く家を使っていこうという発想も生まれる。環境にも良い。しかし残念ながら現在のところ、このGマークにおいても住宅産業が十分にその華を咲かせているとは言えない状況がある。この審査ユニットの商品は世帯あたりの支出金額から言えば自動車に次いで高い消費額なのだが、今年度は他部門の後塵を拝して金賞などの上位賞が出ていない。ぜひ日本経済の牽引役としての自覚のもと、今後さらに市場にとって魅力ある商品企画に各社努め積極的に上位賞をねらっていただきたいと思う。
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