Good Design Award 2003 Winners
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受賞結果速報
審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

商品デザイン部門
ユニット5:調理・食卓商品、調理家電、生活家電

高尾茂行

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■総評

この審査ユニットでは、日常生活の中にとけこんだ身近な製品群を扱う。あと数年でグッドデザインも50周年を迎えようとしているが、その半世紀に近いデザイン変遷の中でGマーク制度開始当時から中核を成してきたこれらの製品を通じて日本における生活文化の変化を見ることができるとも言えよう。
まず調理・食卓商品は単一機能的プロダクトが多く、現代において革新的なデザイン表現が困難な分野であるかもしれない。3階層からなる審査基準の「良いデザインであるか」は、基本的な基準であるが、「優れたデザインであるか」と「未来を拓くデザインであるか」の中の項目を数多く満たすことも容易ではない。今年度各対象審査では、デザイナーの新しい発見や提案が明らかに表現できており、さらに次世代の生活・産業・社会に対して何らかのデザインソリューションとして答えられているかを評価した。具体的には、ユニバーサルデザインをはじめ、エコ素材使用、リサイクル、地場産業とのコラボレーション、さらには日本特有の多食文化への対応、日本の伝統的デザイン要素と工芸的職人技能の融合など新しい取り組みによるデザイン成果について審査ユニット内で討議を重ねた。
次に調理家電、生活家電のカテゴリーでは、松下電器産業(株)の世界初30度斜めドラム採用の洗濯乾燥機「NA-V80」と、(株)東芝のサイクロン方式採用コードレス掃除機「エスカルゴ」がそれぞれ金賞を受賞するとともに大賞候補5点中の2点となり、各担当デザイナーがプレゼンテーションを表彰式会場にて行った。「NA-V80」は、パナソニックデザインの全社的なユニバーサルデザインへの探求の成果であり、細部にわたり充分な配慮の行き届いたクリーンな「ideas for life」が理解できた。「エスカルゴ」については、東京を拠点に50年間家電デザインを継続して行ってきた東芝デザインの「日本らしいデザインとは何か」というテーマに対し、多角的な視点から問題をとらえ、ひとつの答を出している。また、1人のデザイナーのコンセプト力・デザイン力が活かされ、デザインの“面白さ”“遊び”であるところの「Smart and Unique」を十分にアピールできていた。
しかしながら当審査ユニット全体で見ると、総応募点数に対する受賞点数は低調であった。そこには2つの要因がある。1つ目は過去に受賞歴のあるデザイナー、メーカー、ブランド、品種のデザインであっても製品の品質に向上が感じられないデザイン、単なる形状違いもしくはバリエーション的製品で新しく評価できる点がないデザインは、2次審査で不通過とした。2つ目は、企業ごとにデザイン革新の差が製品に現れだしている点である。デザイナーの潜在能力が高くデザイン部門内のマネージメントがしっかりしていたとしても、最終的に企業経営者がいかに未来へ向けてデザイナーの提案を信じ理解できているかという環境格差にある。他のアジア諸国において急速にデザイン力と企業力が発展する今日において、日本にはスピードがない。何事も決定するのに時間を費やしすぎているように思えてならない。この調理・食卓商品から調理家電、生活家電といった分野のみならず、製造企業内外でデザイナーが日本社会経済の発展、新しい生活文化形成へ向けてデザインの重要性を唱えるのは当然のことであるが、世界に向けて「ジャパニーズデザインとは何か、そしてどこに優位性があるのか」を認識しアピールできるデザイナーもしくは企業経営者が国内に何人いるのであろうかと不安にもなる。50年近くのグッドデザイン変遷を通じて進化してきた審査基準ならびに方法は日本の未来を拓くデザイン指標であり、ひとつのベンチマークとして有効に活用して欲しい。

■ジャンル別講評

調理・食卓商品[受賞対象を見る

グラス類、食器といった簡素なテーブルウェアのグッドデザイン対象としての独創的な部分とデザインプロセスの中で優れた点を評価するように心がけた。しかし総受賞点数に対し極めて少数の応募点数である。今後、より優れたデザイン対象を審査委員サイドで探すというような取り組みも必要ではないかと感じた。また日本独自の和食文化を切り口とした新商品も応募されていたが、残念ながら量産品としての完成度が足りないものが数多く見受けられた。ただし、たとえ単価が高く生産数量が少なくとも、高品質感が表現できていた新光金属(株)の製品などは単機能的ではあるが評価された。ツヴィリングJ.A.ヘンケルスジャパン(株)の鍋・フライパンシリーズは、ハンドルとノブデザインの秀逸で斬新な外観と実際の持ちやすさ、調和のとれた全体のまとまり感などを高く評価し中小企業庁長官特別賞を受賞した。また同社のステンレス素材を採用したシンプルな包丁研ぎ器は、存在感とユニバーサルな使い勝手が両立されており、簡素な造形の中で優れたデザインに完成されている点も好評であった。

調理家電、生活家電[受賞対象を見る

金賞受賞対象を除いて高く評価された対象は、50年以上ボリューム感の変わらない商品2点であった。まずブラザー工業(株)ソーイングステーションの新開発自動糸通しカセットシステムは、あえてユニバーサルデザインをアピールせずに各部で実践されている点を高く評価し、ユニバーサルデザイン賞候補とした。インタラクションデザイン賞候補としては、松下電器産業(株)の自動給水コンパクトアイロンの革新的スタイリングに注目が集まった。多機能複雑化するアイロン市場にインパクトある新しい作法と使いやすさのデザイン表現ができていた。炊飯器、空気清浄機、暖房機器、電子レンジ、冷蔵庫、の分野では例年のことであるが、各社のデザイン革新的な変化が見受けられなかった。審査の場面でも何を基準に合否決定するのか議論されたが、次世代のライフスタイルを予感させられるデザインが数点ではあるが製品化されていることも加味し「時代性にあっているか」という観点からも厳しく審査した。次年度に期待を寄せたい。

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