Good Design Award 2003 Winners
Menu page
2003 Outline
Award
etc.
Outline
受賞結果速報
審査委員/審査講評
賞の構成
GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

商品デザイン部門
ユニット3:携帯電話、モバイル関連、カメラ、PCおよび関連商品など

安次富 隆

略歴を見る

当審査ユニットでは、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータなどジャンル別に商品が分類されているが、今年はそれらの機能や形態の区別が次第に曖昧になってきているとの印象を受けた。特にほとんどの携帯電話では、カメラ機能の充実がセールストークとなっており、単純に電話機として見ることは できなくなってきている。(株)NTTドコモ+シャープ(株)第三世代携帯FOMA SH2101V などは、フルキーボードを装備しており、見た目ではPCとの違いがわからない。デジタルカメラでも、今はまだ高画質化競争が主流だが、松下電器産業(株)Panasonic SV-AS10(D-snap)や三洋電機(株)Xacti DMX-C1 などは、カタチだけを見ても従来のカメラのイメージはない。また、(株)リコー Caplio pro G3 のように、画像を送信することができる機種もある。
デジタルの最大の特徴は、あらゆる情報を0と1という共通の信号に置き換えるため、音声、動画、静止画など、情報の違いを意識することなく一緒くたに扱えることである。そのため、録音、録画、写真撮影といったさまざまな機能が容易に複合され、これまで別のジャンルだった商品の境界が曖昧になるのは必然とも言える。しかし、現状は供給されるさまざまな機能という食材をデザイナーが調理できていない、逆にデザイナーが商品のあるべき姿をイメージできているにもかかわらず、技術がそれをバックアップできていないといったアンバランスさを感じる商品が多い。人にとって有用な商品をデザインするためには、商品の目的を明確にした上で、機能の取捨選択が必要なのではないか。
例えば世界初の一般ユーザー向けデジタルハイビジョンカメラ、日本ビクター(株) VICTOR GR-HD1 は、カメラを持ち替えずに撮影アングルを変えられる回転式グリップや、SDカードに記録されたサムネイル画像を選択すると目的の撮影箇所にキューアップできる機能などによって、映像をストレスなく記録、再生できる道具を開発するという目的に絞って技術開発されている。また、松下電器産業(株)Panasonic SV-AS10(D-Snap)は、音声から映像まで、その情報の違いを意識せずに記録できる携帯型多機能機の小型化の限界を模索していると考えられるが、メニュー選択に使用される直径5mmほどのジョグボールが想像以上に使いやすく、単なる実験的な商品でないことがわかる。これら今年金賞を受賞した2つの商品の共通点は、商品の目的や目標を明確にし、目的達成に必要なデザインや技術開発を丁寧に行っていることではなかろうか。
今や見た目だけでその機械が何なのかを判断することは難しくなってきている。おそらく近い将来には今のジャンル分けはさらに意味をなさなくなるだろう。しかしデザイナーとしては、ウォークマンのように今までになかった全く新しいジャンルを誕生させたい。これからの商品開発においては、過去の単一機能の良さを見直すことも重要だが、望むと望まざるとにかかわらず次々と提供される新技術をどう使うかを考えるだけでなく、私たちにとって本当に有用な技術開発を促すデザインが急務であると感じている。

■ジャンル別講評

携帯電話、モバイル関連商品[受賞対象を見る

今年から海外向け商品も加わり、機能や形態が多様化してきた。回転式の京セラ au A5305K や回転式と二つ折りを組み合わせたパナソニックモバイルコミュニケーションズ P505iS、スライド式の三洋テレコミュニケーションズ J-PHONE V-SA702、腕時計型のセイコーインスツルメンツ WRISTOMO(リストモ)など、バラエティ豊かだ。しかし、操作性には不満な点もあり、今後の進化に期待したい。そのような中、オーソドックスなストレートタイプだが、全体を透明感と弾力性のある樹脂で覆い、防水機能を上手に形態表現している Nokia 5100 や、カタチだけでなくバイブレーションの触感までこだわっているKDDIの INFOBAR には、商品の明確な性格づけに成功しているとの印象を持った。今はカメラ付きケータイが流行しているが、さらに多種多様な機能が付加され続けている。大切なことは、商品の明確な性格づけと、それにふさわしい機能やカタチを従来の概念にとらわれることなくデザインすることだろう。

カメラ、デジタルカメラ[受賞対象を見る

このジャンルでは、従来的なスタイルの中で質的向上を志向している商品と、デジタルの特徴を活かして新しいカタチを模索している商品に二極化されてきたとの印象を持った。金賞を受賞した日本ビクター(株) GR-HD1 は、カタチこそオーソドックスだが、世界初の一般用デジタルハイビジョンカメラを実現するために、さまざまな技術的、機能的工夫が集約されている。その一方で、同じく金賞を受賞した松下電器産業(株)の SDマルチカメラ D-Snapや三洋電機(株) Xacti DMX-C1 のカタチには、従来のカメラのイメージはない。また、FOMAテレビ電話への動画、音声を通信できる(株)ナナオのEIZO AirView は、現在の携帯電話機がデジタルカメラ機能を備えていることを考えると、好きな場所にレンズだけ移動し、その風景をリアルタイムに観察、記録できるデジタルカメラの別の進化形を想像させる。今後もカメラ機能に特化した商品は残るに違いないが、今まで見たことのない情報記録機が次々と登場することを楽しみにしている。

パーソナルコンピュータおよび関連商品[受賞対象を見る

操作感に細やかな配慮を感じる商品が印象に残った。ソニー(株) VAIO PEG-Z1 は、本体側面のカーブしたラインの凹部に端子類を集約し、機能表示することで、正面から端子位置がわかるように工夫されている。同様の工夫は、ヤマハ ブロードバンドルーター・ネットボランチ RT57i にも見られる。本体下部に接続されたコード類をスタンドも兼ねた透明なコードクリップを通して確認できるアイデアだ。他にも、環境の明るさによってモニターとキーボードのバックライトの照度を自動調節してくれるアップルコンピュータ(株)の17インチ PowerBook G4 や、指先の操作感までこだわって用意された日本アイ・ビー・エム(株) トラックポイント・キャップなどは、実際に使ってわかる工夫と言える。残念なことは、技術的発展途上の商品群にしては、機能もカタチも全体的におとなしくなっていることだ。無意味なカタチの自己主張は望まないが、目的に応じて変幻自在なデジタル技術を活用した、有用で新しい道具は考えられないだろうか。

ページのトップにもどる