「商品デザイン部門/パーソナルユース/ユニット2」は、「スポーツ・レジャー・ホビー用品」を中心として、「子供用品・育児教育用品」「ハンディキャップド・加齢配慮用品/機器」「衣料・美容・身の回り用品」「パーソナルモビリティー機器」など、非常に幅広いジャンルを審査対象としている。そのため応募商品もソックスや耐寒下着、ゴルフ用手袋から和太鼓、楽器、自転車、モーターサイクル、さらにはウェイクボード用の牽引ボートまで多様を極めたものとなった。
この多様な商品群の審査を同じ評価基準で行なうことは不可能である。「良いデザインであるか」「優れたデザインであるか」「未来を拓くデザインであるか」などGマークの審査基準に沿いつつ、個々の商品群について別の基準を立てる必要がある。機能性、安全性、価格妥当性はもとより、応募商品の使用環境や使用状況、使用者の特性や心理、商品ジャンル別の技術動向の把握など、審査委員に課されたハードルは大きいものだった。
また、このユニットに応募された商品のユーザーには、それぞれの分野でのプロやセミプロ、高度な技能を有する趣味人などが想定される。それらのコアなユーザーの視点とデザインのプロである我々審査委員の視点とを、いかにクロスオーバーさせていくかがこのユニットの審査の難しさであり、同時に醍醐味であったとも言えよう。

審査概要
本年度も、応募企業からのエントリー情報による1次審査と、現品を対象とした2次審査の2段階での審査が行なわれた。1次審査においては、それぞれの審査委員が個別に詳細な情報の読み込みを行ない、審査通過の可否について案を提示した。さらに審査委員が顔を合わせて討議を重ね、最終的に通過の可否を決定した。結果として当ユニットでは、応募商品のすべてを1次審査通過が可能なものと判断した。先に示したように高度なユーザーが存在する以上、商品の「作り込み」の度合いを見ずにデザインの善し悪しを判断する訳にはいかなかったからである。
8月29日・30日に行われた2次審査では、現品を手にしながら、機能性、操作性、ユーザに対する配慮の深度、素材選択の適切さ、技術的な難易度、商品の完成度、デザインの先進性、商品の売り方に対する提案性など多様な基準を組み合わせた審査を行なった。
審査対象のなかには、審査委員が日常的に触れる機会のない商品が多数存在した。その例の一つがフィッシング関連の商品群である。この分野には、プロやセミプロを自認するユーザーが多数存在する。しかし、我々審査委員の誰一人としてスポーツフィッシングなるものを趣味としている者はいなかった。使ったこともない人間が適正な審査を行えるはずはない、とする議論もあろうが、我々が趣味としていなかったからこそ、冷静にデザインのプロとしての視点で審査が行えたと考えている。高度なユーザーの存在を前提に、どれだけの考えを持ってデザイナーがモノの在り方を提案できたか、製造側の作り込みに問題はないか、その商品を通してどのような喜び、希望や夢を提示できたかなど、これからのモノづくりに必要な要素を客観的に問い直すことができたと確信している。
今年度のGマークが掲げる「かけがえのない大切さや大事さ」「共有できる生きがい」とは何なのか、このユニットの審査結果を通して感じ取っていただきたいと思っている。

中小企業庁長官特別賞について
上記の審査経緯を経て、当ユニットからはメガバスの「ルアーシリーズ」5点と、スノーピークのキャンピング用ガソリンストーブを中小企業庁長官特別賞として選出した。デザインコンセプトや基本設計の確かさ、高度なユーザーをも満足させる作り込みの見事さが審査委員間で高く評価された。また、蛇足ながら付け加えれば、これらのメーカーは自社のデザインが競合他社によって模倣されるのを防ぐため、積極的にGマーク制度を活用しようとしている。このようにデザインの重要さとGマークの有効性を理解するメーカーが少しでも増えることを望んでいる。

金賞商品について
9月20日の金賞審査会において、当ユニットから候補として挙げたヤマハ発動機のスクーター「ヤマハ TMAX」が金賞に選出された。ヨーロッパ市場のツーリング事情に配慮し高速ツーリング機能の充実、快適なタンデム走行の実現を目指して開発された大型スクーターである。スクーターとしては世界初となる500cc2気筒水平エンジン、前輪荷重47%、50度のバンク角設定、ダイアモンド型フレームによる剛性の確保など、スポーツバイクのセオリーに則った基本設計がなされている。モーターサイクルの機能性とスクーターの利便性を両立しつつライディングの感動と興奮を与えるスタイリングを追求し、高速スポーツコミューターという新しい二輪車の在り方を提案している点が高く評価された。

今後の方向性
このユニットで審査される商品は、生活のなかで重要な位置を占めると思われるモノばかりである。グローバル性とローカル性とを併せ持つ商品も少なくない。それだけに、この分野のデザイナーには、地道ながらも着実で、ユーザーや環境に対する思いやりを持ったデザインを心がけてもらいたいと思う。